日本ギャスケル協会

会長挨拶

日本ギャスケル協会会長:閑田 朋子


エリザベス・ギャスケル(Elizabeth Gaskell, 1810-65)は英国19世紀、ヴィクトリア朝時代に活躍した作家です。その主要登場人物は、歴史を動かす偉人でもなければ、華々しい活躍をする天才でもありません。むしろ恵まれているとは言い難い状況に置かれ、家族や人間関係、健康上、金銭上などの様々な悩みを抱えています。それでもほとんどの作品の読後感が暗くならないのは、その苦しみのなかで、助け合うこと、赦し合うことの大切さが示されるからではないでしょうか。それは、ある時はボロボロの服を着て怒りを抱えた労働者、ある時は世間から後ろ指を指されて生きる女性、ある時は障がい者となってなお他者を助けようとする者、ある時は貧しいながらも人生を前向きに生きる年配の独身女性たちの姿として、私たち読者の胸に残ります。

ギャスケル文学についての国内外の研究は、とくに20世紀後半になってから、活発かつ多様になったと言われています。日本ギャスケル協会(The Gaskell Society of Japan)は、1985年の英国ギャスケル協会(The Gaskell Society)の設立に続いて、1988年に初代会長の山脇百合子先生のもとで準備大会を開いた上で正規に発足し、今日に至るまで、ギャスケルとその関連分野についての研究促進と会員相互の親睦を目的として、英国協会と連携・協力しながら、活動を続けています。

主たる活動は、機関誌『ギャスケル論集』と会報『ニューズレター』の発行、全国大会と研究会の開催です。また、それぞれの節目を記念して、大阪教育図書株式会社より以下の書籍を出版しております。

協会創立10周年:『ギャスケル全集』全7巻(2000-2006)
協会創立20周年:『ギャスケル全集別巻』全2巻(2008-2009)
ギャスケル生誕200年:『エリザベス・ギャスケルとイギリス文学の伝統』(2010)
ギャスケル没後150年:『エリザベス・ギャスケル中・短編小説研究』(2015)
協会創立30周年:『比較で照らすギャスケル文学』(2018)

日本ギャスケル協会は、ギャスケルの助け合いと赦しの精神に基づいて、前会長の大野龍浩先生がつないでくださった良き伝統を守りながら、さらなる研究の発展を目指します。ギャスケル文学を愛する方々、ヴィクトリア朝の文学・文化・社会にご興味をお持ちの方々はもちろん、文学や読書がお好きな方々のご入会をお待ちいたしております。

2024年4月1日

※本協会は日本学術会議協力学術研究団体です。


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